米連邦準備制度(FRB)のクーグラー理事は、任期が2026年1月末まででしたが、2025年8月に早期辞任の意向を表明しました。
任期も残りわずかであり、今秋学期からワシントンD.C.のジョージタウン大学教授に復帰するため、早期辞任を決めたとのことです。
FRB理事は7名で構成され、任期は14年です。
パウエルもこの7名の理事の1人であり、理事長(FRB議長)を務めています。
今回退任するクーグラー理事の後任をトランプが指名すれば、7名中3名がトランプの任命者となることになります。
クーグラー理事の後任としてトランプが指名したのが、「スティーブン・ミラン」です。

ミランはホワイトハウス経済諮問委員会(CEA)の委員長を務めています。
2005年にボストン大学を卒業し、2010年にハーバード大学で経済学博士を取得しました。
その後、ヘッジファンドのハドソンベイ・キャピタルで主席ストラテジストとして活躍しました。
2020年にはスティーブン・ムニューシン財務長官の経済政策顧問として政界入りし、トランプの経済ブレーンとなった人物です。
ミランは2024年11月、41ページに及ぶ斬新な報告書を発表しました。
内容があまりに衝撃的だったため、「ミラン論文」という通称で広まりました。
内容のポイントは、米国債発行による米国の債務を、米国の力を利用して債務再編すべきだという提案です。
実際、米国の国家債務は耐え難い水準にまで膨らんでいます。

米議会予算局(CBO)は、2025年には債務返済費用が国防費を上回ると予測しています。
米政府は今後10年間で国債の利払いだけで12兆4,000億ドルを支払わなければなりません。
低金利時代に発行された長期国債の比率は減少し、高金利の国債の比率が増加する中で、利払い負担は急増しています。
ミランは、既存の米国債を無利子・100年償還の国債に置き換えることで、利払いを減らしていくべきだと提案しています。
その主要な対象は、米国に対して貿易黒字を出している国々です。
普通なら、利子を支払わず元本を100年後に返すような国債を買う国は存在しないはずです。
しかしミランは、米国の力を利用すれば、そうした国債を買う国が現れると主張します。
その力の源が、米国の安全保障と関税です。
米軍が防衛する代わりに防衛費の負担増を求め、その上で100年無利子国債の購入を要求する、または高関税を課した上で、それを引き下げる代わりに100年国債を提示するという戦略です。
米国の安全保障は、世界最強国による防衛というサービスの対価ともいえます。
そして米国が深刻な貿易赤字と国債金利負担を抱えているのも事実であり、米国の犠牲を一部負担する形で上記の要求に応じることもあり得ます。
しかし問題はその後です。
元本を100年後に返し、利子もつかない国債は価値が極めて低く、現在の米国債のように必要な時に売却して外貨危機に対応することが困難です。
これに対してミランは、100年国債を購入してくれた国には、その額に相当するドルのスワップラインを提供し、外貨危機の可能性を解消すればよいと述べています。
ミラン論文では、新規国債だけでなく既存国債についても提言しています。
外貨流動性枯渇への備えとなる準備資産を提供する代わりに「国債使用料」を課せばよいというのです。
例えば利子4%の国債であれば、使用料4%を徴収して利払いをゼロにするという論理です。
これが成功すれば、米国は国家債務から解放されるという歴史的な出来事となります。
そしてトランプは、自身のマールアラーゴ別荘からこれを発表し、2026年3月には主要国の財務大臣を招いて「マールアラーゴ合意」を取り付けることを、政策チームが真剣に検討しているとのことです。
こうした内容を考えている人物をFRB理事に指名するトランプも、ある意味で相当なものですね。