米国株と米国債の上昇チャンス?FRBがSLR規制の緩和を決定

 

tomotou.com

以前の記事で、SLR規制の緩和の可能性について取り上げたことがあります。

SLRとは、自己資本を総資産で割った数値のことです。

リスク発生に備えて、米国の銀行が十分な資本を保有し、リスクを管理することを目的に導入された制度です。

現在のSLR規制では、総資産が2,500億ドル以上の大手銀行には3%以上、そして世界の金融システムに影響を及ぼす可能性のある超大手銀行には5%以上の自己資本の保有が求められています。
現在、5%のSLR規制の対象となっている超大手銀行は、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーなどです。

 

2025年6月26日、米連邦準備制度理事会(FRB)は、SLR規制を緩和することを決定しました。
FRB理事会が開かれ、賛成5名、反対2名という結果で、SLR規制の緩和案が可決されました。

SLR緩和に対して、銀行規制の専門家であるマイケル・バー理事は、「この緩和は銀行の破綻リスクを高め、破綻時の対応を困難にし、連邦預金保険基金にさらなる損失をもたらす」と強く批判しています。
この緩和案は、今後60日間の意見公募期間を経て最終的に実施される予定です。

今回の緩和案の具体的内容は、超大手銀行に対するSLR規制を現在の5%から3%へと引き下げるというものです。

これにより、超大手銀行は減少した2%分の自己資本に相当する金額分の米国債を新たに購入できるようになり、約1兆8,000億ドル分の米国債追加購入が可能になります。

現在、米国債の最大保有国は日本で、約1兆1,000億ドルを保有しています。
次いで中国が約7,600億ドルを保有しているため、今回のSLR緩和は、日本と中国の保有額に匹敵する新たな需要を市場に生み出す効果があります。
米国の超大手銀行が1兆8,000億ドル分の国債を追加で購入できるようになれば、米国債の大規模な需要が創出され、トランプの意図どおりに国債金利が下がることになります。

 

ただし、今回はすぐに一律で3%に引き下げるのではなく、まずは3.5~4.5%とする柔軟な対応が取られました。
JPモルガンやゴールドマン・サックスなど、ポートフォリオが複雑な超大手銀行には4.5%が適用され、ビジネスモデルが比較的単純な中小銀行には3.5%が適用されます。

今回は超大手銀行だけでなく、銀行の子会社に対するSLR基準も同時に調整されました。
子会社については、6%から3.5%へと大幅に引き下げられたため、2,100億ドルの資本余力が生まれます。
一方、超大手銀行は5%から4.5%への軽度な引き下げで、130億ドルの余力が生まれます。

理論上、この余力を全て米国債購入に充てた場合、最大で9兆ドル分の国債保有が可能となります。
ただし、通常は10~20%程度を保有するため、実際には約9,000億ドル〜1兆8,000億ドル程度の追加購入余地が生じると見られています。


まとめると、超大手銀行には5%から4.5%への軽度の引き下げを行い、市場への衝撃を和らげつつ、ポートフォリオが単純な銀行子会社には6%から3.5%という大幅な緩和を行うことで、SLR規制緩和の効果を最大化しています。

米国債10年

国債を購入できる余力が増えれば、国債価格は上昇し、金利は下がります。
また、銀行に資本の余裕が生まれれば、ローンの拡大などを通じて市場に流動性が供給される効果も期待できます。

その結果、米国株と米国債が同時に上昇する可能性が高い状況です。