米国の台湾に対する関税率が20%と結構高い水準で発表されました。
アメリカの半導体に対する関税100%については、台湾のTSMCには適用外という発表もありますが、結局のところ、TSMCと半導体が問題の根源であると見られます。
関連する内容を整理してみたいと思います。
TSMCは1987年に台湾の国営企業として設立されました。
1992年に民営化されましたが、台湾政府が7%の株式を保有しており、政府が実質的な大株主である企業です。
TSMCの強みは、他社から設計図を受け取り、半導体を受託生産する点(Foundry、ファウンドリ)にあります。
製造業の歴史を見ると、後発企業が先進企業の製品を受託生産する中で技術力を高め、自社開発へと成長していくケースが多くあります。
例えばアメリカのアップルの立場から見ると、韓国のサムスン電子のファウンドリに受託生産を依頼するのは、スマートフォンの競合企業であるため技術流出の懸念があります。
一方、TSMCはあくまで受託専業を貫く方針のため、TSMCに生産を任せる方が安心できるのです。

こうしたTSMCの成長において、インテルの存在が不確定要因となっています。
アメリカの半導体大手であるインテルは、巨額の資金を投入したにもかかわらず、1.8ナノのファウンドリ開発に失敗し、ファウンドリ事業の売却まで検討していた状況です。
しかし、アメリカ政府の立場からすれば、外国企業のアメリカ工場よりも、アメリカ企業のアメリカ工場を優先するのは当然のことです。
インテルは過去のCEOの誤った判断によって弱体化しましたが、そのまま倒産させるのは容易ではありません。
軍に関連する半導体など、アメリカ国内の極秘技術はインテル以外の企業ではセキュリティ上の問題から生産できないためです。
このような状況の中、アメリカは台湾に対し、関税を20%から15%に引き下げる条件として、「インテル51%、TSMC49%」の合弁会社設立を提示しているとされています。
しかし、台湾側はアメリカへの投資や市場開放、アメリカ産車の輸入、アラスカ産LNGの購入などはすべて受け入れるとしながらも、インテルとTSMCによる合弁会社の設立だけは受け入れられないと回答したとのことです。
ところが、台湾全体の国益ではなく、TSMC単体の立場から見ると、台湾国内での工場拡張にも課題があります。
台湾では電力需要は急増しているのに、電力供給は減少しており、電力不足が深刻で電気料金も急騰しています。
さらに台湾は日本と同様に地震が多い国であり、地震が発生するたびに半導体のウェハーはすべて廃棄しなければならないという問題もあります。
台湾の電力や地震関連の内容は過去の記事にもまとめたことがあります。
TSMCが通常の民間企業であれば、電気が豊富で安いアメリカへ移転するのが合理的な選択かもしれません。
しかし、民営化されたとはいえ実質的には国営企業であるため、TSMCの海外移転は容易に選べる選択肢ではありません。
インテルが51%を保有するアメリカ国内の半導体ファウンドリ合弁企業設立という要求を台湾が受け入れられないことが、台湾が高関税を適用された理由だと思います。