バークシャーが東京海上の株を18億ドルも買った理由:日本の損保会社に潜む2つの構造変化

バークシャーが東京海上の株を18億ドルも買った理由:日本の損保会社に潜む2つの構造変化

バークシャー、東京海上株の取得を発表

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが、東京海上ホールディングスの株式2.5%を約18億ドルで取得したと発表しました。かつて日本の5大総合商社に大規模な投資を行ったバークシャーが、今度は日本の損害保険大手に照準を合わせてきた格好です。では、なぜ今このセクターなのでしょうか。

なぜ今、日本の損保なのか

バークシャーが投資先として損保セクターを選んだ背景には、日本固有の2つの構造変化が重なっています。対象となる主要4社は、東京海上ホールディングス、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損保、損保ジャパンです。これらの企業に今まさに追い風となっている変化を、順を追って見ていきます。

理由① 金利正常化による運用収益の改善

損害保険会社は、保険料収入を長期で運用することで利差益を得るビジネスモデルです。日本銀行が長年続けてきたゼロ金利・マイナス金利政策のもとでは、この運用収益がほぼ見込めない状況が続いていました。しかし日銀が金利正常化に舵を切ったことで、損保各社の運用環境は大きく変わりつつあります。金利の上昇は、保険ビジネスの収益構造そのものを底上げする要因になります。バフェットが長年にわたり保険会社を愛好してきたのも、こうしたフロート(保険料の運用資産)を活用したビジネスモデルへの理解があってのことです。

理由② 政策保有株の全量売却が解放する価値

もう一つの変化は、政策保有株の問題です。政策保有株とは、投資収益を目的とするのではなく、取引先との関係維持を目的として長期保有する株式のことです。日本では企業間で互いの株式を持ち合い、経営権を守り合う慣行が長年続いてきました。メガバンクが主要取引先の株式を数十年前から保有し続けているようなケースが、その典型です。

市場からは、持ち合い株主同士では株主としての監視機能が働きにくく、企業価値向上への取り組みが遅れるという批判が以前から根強くありました。こうした問題意識を背景に、2024年2月、金融庁は政策保有比率が特に高い4大損保に対して保有株の全量売却を指示。各社は同年5月末提出の定期報告書で、数年かけて段階的に売却を進めると回答しています。

4社が保有する政策保有株の総額は約6兆5000億円規模に上ります。多くは過去の取得価格のまま帳簿に計上されており、売却時に生じる評価益はかなりの規模になると見込まれています。この益が配当拡充や自社株買いの原資として株主に還元されれば、株主価値の大幅な改善につながります。バークシャーのように株主還元を重視する長期投資家にとって、これは見逃せないポイントです。

政策保有株の売却は単なるバランスシートの整理ではなく、日本企業のガバナンス改革の文脈でも注目される動きです。東証による資本効率改善の要請と合わせて、この流れは当面続くとみられています。

総合商社の次は、損保へ

バークシャーの日本株戦略は、総合商社という「資源・貿易・金融を束ねた複合企業」への投資から始まり、今回の損保へと続いています。金利上昇による運用収益の改善と、政策保有株売却による株主還元の拡大という2つの変化は、どちらも数年単位で続く構造的なテーマです。バフェットが好む「長期で保有できる、分かりやすいビジネスモデル」という基準に、日本の大手損保はよく当てはまります。

バークシャー・ハサウェイは、日本の総合商社に続き、今度は損保大手への投資に動きました。その選球眼は、やはり確かなものがあります。