
米国国土安全保障省 税関・国境取締局 (CBP)の通関確認書で、1kgおよび3.1kgの金塊が関税対象となっていることが確認されたと、フィナンシャル・タイムズが報じました。
関連内容を整理してみたいと思います。
2025年2月、米国と英国の間で金価格の大きな乖離が発生しました。
世界で金が最も多く取引されるハブ取引所は2か所あり、それがニューヨークとロンドンです。
米国には金先物市場であるニューヨークCOMEXがあり、ロンドンには金現物市場があります。
2025年1~2月、ニューヨークの金先物価格は11%上昇しましたが、ロンドンではそれほど上がりませんでした。
その結果、両市場の価格差は20~60ドルに広がりました。
ニューヨークで金が高く売れる場合、ロンドンで金を購入してニューヨークで金先物を売れば、その差額分の利益を得ることができます。
イングランド銀行から金を引き出して運搬する過程で費用はかかりますが、その費用以上に価格差が大きければ金塊の移動が発生します。
ただし、実物の金を移動させる場合でも、英国から米国へ直接送ることはありません。
これは、ニューヨークとロンドンの金市場で標準とされる金塊のサイズが異なるためです。
ロンドンでは12.4kgの大型金塊が標準で、現物取引を行う顧客は大手機関が多く、大型金塊が主流です。
一方、ニューヨークCOMEXでは比較的少額単位の先物取引が中心で、3.1kgの小型金塊が標準です。
つまり、ロンドンからニューヨークへ金を送るには規格を合わせる必要があります。
ロンドンのイングランド銀行から現物金を引き出し、ニューヨーク市場で取引されるサイズに再加工して送るのが一般的です。
こうした金塊の再加工を担っているのがスイスです。
スイスは世界の金塊再加工の70%以上を行っており、精密な工程で純度検証と認証を経て、両市場の要件を満たしています。
米国で金に関税が課される可能性が浮上し、2025年1~2月の間に英国から米国へ393トンの金が移動し、この2か月間でニューヨークCOMEXの金在庫は926トン増加しました。
JPモルガンやHSBCなどが保有する民間金庫へ輸送された分まで含めれば、米国へ移動した量はさらに多かったはずです。
JPモルガンは2025年2月だけで40億ドル相当の金をニューヨークへ運ぶ計画を明らかにしています。
金も原材料であるため、関税の対象となり得ます。
金に関税がかかれば、その分販売価格は上がります。
米国に輸入される金が関税適用のリスクにさらされるなら、関税が発生する前に先んじて米国に金を送る必要が出てきます。
今回関税が適用された金塊は、ほとんどがスイスで再加工されて輸出されたものです。
スイスは3.1kgのほか、富裕層個人向けに1kgの金塊も輸出しています。
米国がこれをスイスからの輸出品と認定すれば、39%の関税が課されます。
以前の記事でも触れたように、トランプはスイスの製薬会社にも圧力をかけてきました。
スイスの輸出のうち、30.4%を占める第1位の輸出品目が金であり、17.0%を占める第2位が医薬品です。
米国の政策に同調しない国がどうなるのか、スイスを見せしめにしているようにも感じられます。
このように、金塊への関税は「今後課す」という話ではなく、すでに関税が課されていることが確認されました。
一部の金塊に限られますが、金取引に税金を課すというのは、金への投資需要を冷え込ませる可能性があります。
ただし、影響が大きい政策であるため、撤回される可能性もあります。
もしこのまま実行されれば、その反射的な恩恵は仮想通貨が受ける可能性が高いです。