人間は20代から歯が徐々に劣化し始めます。
平均寿命が延びるにつれて歯に問題が生じるケースが増え、最近ではインプラントを選ぶ人が多くなっています。
過去には入れ歯が主流でしたが、入れ歯は顎の骨ではなく歯茎から支持力を得る仕組みです。
そのため、入れ歯による持続的な圧力で歯茎と歯槽骨が損傷する副作用がありました。
現在広く行われているインプラントは、歯茎ではなく顎骨に穴を開けてネジを埋め込み、その上に人工歯を取り付ける方法です。
入れ歯に比べて歯槽骨や歯茎の損傷が少なく、咀嚼力も入れ歯の5倍以上とされており、インプラントを選択する人が増えています。
しかし、ネジを埋め込んだ部分で炎症が起きたり、歯茎や顎骨が損傷した場合、インプラントができないこともあります。
人間の場合、永久歯が一生に一度しか生えないことが根本的な問題です。
他の動物と比べると、サメは数百本の歯を持ち、歯が抜けても新しい歯が次々と生えてきます。
サメの歯を研究していた科学者たちは、人間にも「Tooth Bud(歯の芽)」が存在することを確認しました。
人間にもTooth Budが存在しますが、「USAG-1」というタンパク質がTooth Budの歯への成長を阻止していることが判明しています。
2018年、マウスに対してUSAG-1タンパク質を抑制したところ、新しい歯が生えてくることが確認されました。
乳歯と永久歯の両方を持つマウスでも新しい歯を生やすことに成功したのです。
次に必要なのは、人間で新しい歯が生えるかどうかの実験です。
2025年9月、日本の「トレジェムバイオファーマ」は、虫歯などで一部の歯を失った30〜64歳の男性を対象に、薬剤の安全性や副作用を評価する第1相臨床試験を開始します。
2026年に第2相、2027〜2029年に第3相を実施し、2030年には健康保険適用を目指す計画です。
新しい歯を生やす効果は期待されていますが、副作用の有無が鍵を握ります。
臨床試験が成功し商用化されれば、入れ歯やインプラントではなく「自分の新しい歯を生やす時代」が到来するかもしれません。
ただし、トレジェムはこの薬の価格を150万円と設定しており、インプラントや入れ歯より高額になる見込みです。
長寿社会では歯の健康がますます重要です。
入れ歯やインプラントといった選択肢もありますが、やはり「自分の歯」が最も理想的です。
薬の価格が高くても需要は十分にあるでしょう。
人間の寿命が延びるほど、シルバービジネスの市場は今後も拡大せざるを得ない環境にあります。