ベトナムと米国の貿易合意成立(ベトナムは中国の代替国となるのか?)

ベトナムは米国にとって貿易赤字第3位の国であり、中国製品の迂回輸出ルートとしても活用されているため、トランプはベトナムに対して最高水準の46%の相互関税を適用していました。

米国の関税

 

ベトナムの総輸出額のうち、米国向けの輸出が30%を占めており、これはベトナム経済にとって非常に致命的な打撃でした。


ベトナムの主要輸出品目と中国企業との関係

ベトナムの輸出第1位の品目はスマートフォン、半導体、コンピュータ部品などです。
これは韓国のサムスンやLGといった企業がベトナムで製造し米国に出荷している影響もありますが、中国企業もベトナムを通じて輸出しており、両国の関係は密接です。

ベトナムの輸出第2位の品目は繊維・衣料品で、ベトナム製の衣料品は米国市場で10%以上のシェアを持っていますが、その多くは中国企業が迂回輸出しているものです。
繊維・衣料品産業がベトナムの主力となったのは、2019年に米国が「ウイグル強制労働防止法」を制定した影響で、中国企業が輸出拠点をベトナムに移した結果です。


韓国企業と中国企業の輸出構造の違い

ベトナムの主要輸出品目において、韓国企業と中国企業の間には大きな違いがあります。
韓国企業はベトナムで製品を直接製造して米国へ輸出していますが、中国企業は中国で生産した製品をベトナムで保管・積替えし、米国に送っています。
つまり、ベトナムに存在する多数の中国系工場は、製造拠点ではなく中国製品の倉庫です。


ベトナムの対応と関税引き下げ交渉

46%の高関税が適用された後、ベトナム共産党の書記長はトランプに直接電話をかけ、交渉のために関税の適用を1〜3ヶ月延期するよう要請しました。
その見返りとして、ベトナムは米国産の天然ガス、自動車、エタノールなどの関税を引き下げ、さらには鶏もも肉、リンゴ、アーモンドといった農産物の関税も引き下げました。

米国にとって、ベトナムは輸出構造上、中国の代替国となり得る重要な存在です。

実際、繊維、衣料、靴、木材、水産物などの分野で、ベトナムは中国を代替しつつあります。


トランプは、ベトナムが報復関税で対抗せず、協議の電話をしてきたことに満足していました。

 


貿易合意の詳細

2025年7月3日、トランプはベトナムとの貿易合意に達したと発表しました。
2025年1〜4月において、ベトナムは中国、アイルランド、メキシコ、スイスに次いで米国に5番目に大きな貿易赤字をもたらした国です。

今回の貿易合意では、米国に入る全てのベトナム産商品に対して20%の関税を課すとし、さらに第三国がベトナムを経由して米国に輸出する積替え品には40%の関税を課すと発表しました。
これは、46%の相互関税を20%に引き下げつつ、産地偽装による中国産品の流入を防ぐために積替え品には高関税を維持する形です。
結果として、トランプはベトナム産品に20%の関税を課す一方で、米国産自動車などの関税を0%にしました。(0%関税が米国産自動車の販売に直結するとは思えないですが)

加えて、偶然のように見える必然として、通常2年かかるはずのトランプ一族のベトナムリゾート事業の認可がわずか2ヶ月で完了しました。
これらを踏まえると、トランプにとって今回の交渉結果は悪くない成果だと思います。

 

このような動きの中、グローバル資金は中国への投資比率を減らし、ベトナムへの投資を増やしています。
中国は内外でさまざまな困難に直面しています。