トランプが、イスラエル・イランの全面的かつ完全な停戦を発表したことで、およそ2週間続いた戦争リスクは事実上終息を迎えました。
トランプは「世界は12日間の戦争の終息を祝うべきだ」と述べ、「この戦争は数年間続く可能性があり、中東全体を破壊しかねなかったが、そうはならず、これからも決してそうならない」と強調しました。
これは、自らが平和を導いたという点を強くアピールしたものであり、ノーベル平和賞への意欲をにじませていると見る向きもあります。
もちろん、停戦発表後もイランとイスラエルがミサイルの応酬を続けてはいますが、市場ではこれをもはやリスクと見なしておらず、大きな反応は見られない状況です。
ナスダック指数の動きが示す市場心理
ナスダック指数の推移を見ると、まるで何も起こらなかったかのような動きを見せています。
地政学的リスクが高まったにもかかわらず、リスク資産への投資意欲が減退するどころかむしろ強まっているということは、メディアで報じられているようなリスクが市場ではもはやリスクと見なされていないということです。
戦争は拡大よりも終息に向かっているということを、市場はすでに株価に織り込んでいます。
その結果、2025年6月24日現在、ナスダックは過去最高値の更新を目前に控えています。
原油価格で見る戦争の実態
イスラエルとイランの戦争の様子は、原油価格を見るのが最も早く、そして正確です。
以前の記事でも解説したように、イランはホルムズ海峡を管理しているため、原油価格への影響力が非常に大きい国です。
原油価格が再び下落傾向を見せているのは、市場が戦争の終結が近いと解釈しているからだと言えます。
現在、原油は供給過剰の状態にあり、戦争リスク以外に価格上昇の要因がないため、戦争リスクが後退すれば、原油価格は本来のトレンドに戻らざるを得ない状況です。
市場が注目する真のテーマとは?
市場はすでに戦争というテーマから目を離し、別のテーマに注目しています。
それが「利下げ」です。
FRB(米連邦準備制度)の代表的タカ派であるボウマン副議長でさえ、「労働市場のリスクが高まる一方、インフレ目標に近づいているため、早ければ7月にも利下げを行う可能性がある」と本日発言をしました。
FRBの中でもタカ派が7月の利下げを語るようであれば、市場が長らく期待してきた利下げの実現が目前に迫っているということを意味し、市場はその期待をすでに織り込みつつあります。
戦争リスクと株式市場の関係性:過去からの教訓
これまでも戦争が起きるたびに市場には恐怖が広がり、急落が起こってきました。
しかし、2022年2月のロシア・ウクライナ戦争、2023年10月のイスラエルによるハマス空爆、2024年10月のイランによるイスラエルへのミサイル攻撃、そして直近の2025年6月のイスラエル・イラン戦争においても同様に、戦争リスクは市場に一時的なショックを与えたものの、むしろその後の上昇の原動力となってきました。
「Buy on the fear, sell on the greed(恐怖で買い、強欲で売れ)」という格言の通り、ニュースに一喜一憂せず、優良銘柄を着実に積み上げていくことが重要だと感じます。