AI時代に個人投資家が生き残る戦略について ー HFT、バフェット流

AIが進化するにつれて、私たちの生活はさまざまな場面で変わり始めています。
当然、株式市場もその影響を受けており、株式投資においてもAIの存在感が高まっています。


株式取引におけるAI活用とHFTの登場

株式取引でAIを活用する方法のひとつに、HFT(High Frequency Trading、ハイ・フリークエンシー・トレーディング)と呼ばれる超高速取引手法があります。
HFTとは、超高性能コンピュータを用いてリアルタイムでデータを処理し、数百万件もの注文を一瞬でさばく取引手法です。

人間のまばたき1回にかかる時間は約0.35秒ですが、この0.35秒の間に、HFTの世界では2,447回もの取引が可能です。

HFTにはさまざまな手法がありますが、その中でも代表的なのがリスクなしで利益を追求する手法です。

これは、機関投資家や個人投資家が出す大口の買い注文情報を瞬時に察知し、それに基づいて自動的に売買を行う仕組みです。

たとえば、誰かがある銘柄を10万株、1万円で買い注文を出した場合、人間がそれを認識するまでに早くても約0.35秒かかります。
しかし、HFTはこれを0.001秒で察知し、すぐに買いに入ります。
HFTは大口買い注文の発生を検知するとすぐに買いを入れ、その後に続いて株を買おうとする個人投資家に対し、若干の利益を乗せて売却することで、リスクなしで利益を得ることができます。

米国証券市場に登録されている約2万の投資機関のうち、HFTを行っているのはわずか2%程度に過ぎません。

しかし、HFTは米国市場における全注文の約73%を占めています。
中でも最大のHFT機関はゴールドマン・サックスで、全取引の約24%を担っています。


HFTの優位性

株式市場には、注文に対して2つの原則があります。

1つ目は「時間優先の原則」です。
同じ価格で注文が出された場合、より早く出した注文が優先されます。

2つ目は「数量優先の原則」です。
同じ価格で同じタイミングに注文が出された場合、注文数量が多いほうが優先されます。

これらの原則は、HFTにとって非常に有利に働きます。

個人投資家がHFTに勝つことは不可能に近く、実際のところHFTはHFT同士で競争しています。

一例として、シカゴに拠点を置くあるHFT機関は、ニューヨークまでの700マイル(約1,126km)の通信速度を0.007秒から0.006秒に短縮するために、アパラチア山脈を貫く専用通信回線を3億ドルかけて敷設しました。
わずか0.001秒の短縮のために、3億ドルを投じたのです。

日本でも、通信遅延を減らすために、多くの証券会社がJPX(日本取引所グループ)のサーバーが置かれているデータセンターと同じ場所に自社のサーバーを設置しています。


このように、AIはこれまでリスクフリーの超高速取引領域で活躍してきましたが、AIの進化により、今では一般的な株式投資の領域にも広がりつつあります。

ドイツのある研究チームは、ディープラーニングを含む3種類のAIを活用して、過去の株価変動データを学習させ、直近23年間にわたる模擬投資を行いました。
驚くべきことに、このAIは模擬投資で23年間の平均年間リターンが73%という成績を収めました。
特にAIは2000年のドットコムバブル時には545%、2008年のリーマンショック時には681%の収益率を記録しており、世界的な危機のタイミングに強い傾向にありました。



このように、個人投資家が企業を分析し、株価パターンを読みながら売買を行う形で利益を上げることは、ますます難しくなってきています。
だからこそ、個人投資家にとっては、売買回数を最小限に抑え、優良企業の株もしくはインデックスファンドなどを買って目標株価に達するまで保有し続ける、ウォーレン・バフェット流の長期投資こそが最適解なのではないかと思ったりする今頃です。