投資先として「銅」にも注目する理由

金、銀、銅

多くの人が貴金属の投資先として金や銀、プラチナに注目しますが、実は銅も有望な投資先の一つです。
その理由について整理してみたいと思います。


銅の優れた電気伝導性

銅はあらゆる金属の中で、銀に次いで電気伝導性が2番目に高い金属です。
電気伝導性が最も高いのは銀ですが、銀は銅の約100倍も高価なため、電気関連の用途には主に銅が使われます。

銅は世界中に幅広く分布していますが、容易に採掘できる鉱山はチリに多く、世界の銅生産の約3分の1がチリで行われています。
しかしそのチリの銅採掘は、年々難しくなってきています。
というのも、銅鉱山の採掘がどんどん深い地下まで進んでおり、採掘コストが上昇しているからです。
一方で、銅の需要は急速に増加しています。


銅価格が上昇する2つの主な理由

銅価格が上昇している理由は、大きく分けて2つあります。

① 電気自動車の普及による需要増加

電気自動車には大量の銅が使われます。
特にバッテリーには多くの銅が必要なため、電気自動車1台あたりの銅使用量は、ガソリン車の約5倍にもなります。
電気自動車の販売が拡大するにつれ、銅製の電線の需要が急速に伸びています。

② データセンターの建設ラッシュ

AIの発展により、世界中でデータセンターの需要が急増しています。

S&P主催で米ヒューストンにて開催されたエネルギーカンファレンス「CERAWeek」では、AIの進展とそれに伴う電力需要の増加が主要テーマとなりました。

アマゾンの副社長によれば、地球のどこかで3日に1つ、新しいデータセンターが建設されているとのことです。
マイクロソフトのビル・ゲイツも「AIが消費する電力は信じられないほど膨大であり、今後データセンターの収益性を左右するのは電力である」と述べています。

ちなみに、データセンターの建設には、1メガワットあたり平均27トンの銅が必要です。
マイクロソフトのシカゴ・データセンターには、実に2,177トンの銅が使われたと言われています。

これは電源ケーブルだけでなく、冷却用の熱交換器、配電ストリップ、電気コネクタなど、さまざまなところで銅が使われているためです。

国際エネルギー機関(IEA)は、2026年までにデータセンターの電力需要が現在の2倍になると予測しています。
つまり、データセンターが増えるほど、銅の需要も爆発的に増加せざるを得ない状況です。
 


中国の銅消費と供給のギャップ

また、世界の銅の55%を中国が消費しており、中国経済と銅価格は密接に関連しています。
中国の課題のひとつは、国内に銅の埋蔵量が少ないことです。

実際に中国の銅埋蔵量は全体のわずか4%に過ぎませんが、銅鉱石を輸入して自国で製錬し、世界の銅供給の約半分を担っています。

銅が中国経済にとって非常に重要であることから、中国政府は銅を「戦略的備蓄鉱物」として指定しました。
これは、海外の銅鉱山を積極的に確保し、国内需要を上回る量を備蓄していくという意味です。


中国と日本が銅資源確保を加速

中国政府は2024年に「高品質発展」を強調し、2025年にはAIを重点分野として掲げています。
電気自動車、太陽光発電、リチウム電池といった「高品質発展」分野とAIには、共通して銅が不可欠です。

このような背景から、日本と中国は銅鉱山の確保を積極的に進めています。

日本はチリの主要な銅鉱山5カ所を既に確保しており、さらにその数を増やしています。

三菱商事は、世界最大級の埋蔵量を誇るケラール鉱山に22億ドルを投じて40%の権益を取得しました。
2023年からは、チリの国営鉱山企業Codelcoと共に新規鉱山の開発も進めています。

鉱山開発は、成功すれば巨額のリターンが得られる一方、失敗すれば何も得られない、ハイリスク・ハイリターンな産業です。

日本のJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)は、鉱山開発の失敗による損失を補償し、金融支援を行う形で関与しています。

住友商事も、政府の支援金を活用して、チリのケブラダ・ブランカ鉱山の権益を拡大中です。

中国もチベットにおける銅鉱山の開発に積極的です。
チベットには埋蔵量が豊富で採掘が容易な高品質な鉱山が多く、中国最大の銅鉱山である玉龍鉱山もチベットにあります。
中国はこの玉龍鉱山に約175億元を投じ、1日35万トンの銅鉱石を採掘する計画です。


2030年には2,150万トンの銅が不足?

各種分析機関の予測によれば、2030年には2,150万トンの銅が不足すると見られています。

銅価格の推移

 

実際、銅価格の推移を見ると、上昇トレンドが明確に続いています。

またLME(London Metal Exchange、ロンドン金属取引所)のデータによれば、2024年8月以降、銅の在庫(茶色の部分)が減少傾向にあります。

銅の在庫(出典:LME、London Metal Exchange)

 

これは需要が伸びているにもかかわらず、コンゴ民主共和国やチリといった銅の供給国からの産出量が減っているためです。

たとえば、コンゴ民主共和国のカモア・カクラ鉱山では、地震の影響で坑道が浸水し、年間27万5,000トンの供給に支障が出る見込みです。

また、現在の銅在庫のうち40%が「Cancelled Warrant」、つまり出庫待ちの状態であり、実際には利用可能な在庫とは言えない点も銅の供給不足を反映しており、実際の市場では在庫不足への懸念から銅価格が上昇傾向を強めています。

以上のことから、銅は今後、有望な投資先として注目される可能性が高いです。

 

銅への投資が難しい場合、チリETFに投資するもの選択肢の一つです。

チリETFは銅の価格に連動するパターンがあるからです。