わずか1年前までは市場から成功の可能性について否定的な評価を受けていたSMRやMMRに、今では投資資金が集中しています。
原子力発電は、大型原子力発電(出力1,000MWe以上)から小型モジュール炉(SMR、50~300MWe)へ、さらにマイクロモジュール炉(MMR、10MWe以下)へと進化しています。
- SMR(小型モジュール炉)とは、「Small Modular Reactor」の略で、小型で工場で組み立てが可能な原子炉です。従来の大型原発よりも安全性が高く、柔軟に設置できます。
- MMR(マイクロモジュール炉)はSMRよりさらに小型の「Micro Modular Reactor」の略で、地域の小規模施設向けに設計された超小型原子炉です。
安定した電力供給が可能で、遠隔地への導入にも適しています。
儲かる可能性が高い分野には必ず目をつける人がいます。ウォーレン・バフェットです。
アメリカの電力会社PacifiCorp(パシフィコープ)はバフェットのバークシャー・ハサウェイ傘下の企業であり、SMR事業に参入したMidAmerican Energy(ミッドアメリカン・エナジー)も同じくバークシャー・ハサウェイが所有する企業です。
SMRやMMRに、バークシャー・ハサウェイ、マイクロソフト等のビッグテック、Open AIなどが投資していることから、将来有望の分野となっています。
データセンター需要がSMR企業の株価を押し上げ
SMR(小型モジュール炉)関連企業の株価が上昇した背景には、データセンターがあります。
SMRは従来の原発に比べて建設期間が短く、大規模な冷却水も不要な構造となっています。
これにより、データセンターの近隣に設置することが可能であり、送電線も最小限に抑えられます。
もちろん、SMRは建設費が通常の原発より高く、運営コストも割高という欠点があります。
しかし、アマゾン、メタ、グーグル、マイクロソフトというビッグテック4社にとっては、この程度のコストは大きな問題ではありません。
これらの4社が2025年にデータセンター建設に投じる予定の費用は、合計で1,780億ドルにも上るとされています。
MMR関連銘柄:Oklo、Nano Nuclear、USNCなど
MMR(マイクロモジュール炉)関連の企業としては、Oklo、Nano Nuclear Energy、USNCなどがあります。
ChatGPTを開発したOpenAIは、マイクロ原子炉を研究するOkloに投資を行っています。
アメリカのNano Nuclear Energyは、大型トラックに搭載可能な移動式マイクロ原子炉の開発を進めています。
アメリカエネルギー省(DOE)がその設計を支援しており、開発は比較的早いペースで進んでいます。
アメリカでは、アクセスが困難な地域や鉱山、被災地、軍事基地などでの独立電源として、マイクロ原子炉の活用が検討されています。
マイクロ原子炉の特徴の一つとして、放射性廃棄物の再利用が可能である点が挙げられます。
Okloは、既存の原発から出る放射性廃棄物を再利用し、AIの計算処理などに必要な電力を供給することを目指しています。
この技術が実用化されれば、従来のように放射性廃棄物を地下深くに永久保存する方式ではなく、再利用という新たな方向に転換する可能性があります。
既に保存している大量の放射性廃棄物を再利用できる点も魅力的です。
原発への関心も再び高まっている
SMRやMMRだけでなく、従来型の原子力発電への需要も再び高まっています。
現在アメリカには94基の原子力発電所がありますが、過去46年間で新たに建設されたのはわずか2基だけです。
このような状況の中、トランプは2050年までに原発の発電容量を400GWに拡大するため、4つの大統領令に署名しました。
これら4つの大統領令は以下の通りです。
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原発の認可手続きの迅速化
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実験用原子炉の規制緩和
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原子力規制委員会(NRC)の改革
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原子力産業への投資拡大
現在アメリカの原発容量は97GWです。
1基あたり1GWとすると、400GWにするためには新たに300基以上の原発が必要になります。
トランプの任期中には、新たな大型原発10基の着工が計画されています。
この動きはアメリカだけに限ったものではありません。
ベルギーは22年ぶりに脱原発法を廃止し、スイスも法律を改正して新規原発の建設を許可しました。
スウェーデンでは新規原発建設への資金支援法案が議会を通過し、イタリアでも原子力技術の使用を認める法案が成立しました。
デンマークは40年ぶりに脱原発政策を撤回し、SMR導入の検討を始めました。
クロアチアではすでにSMRの建設を推進しています。
このように、アメリカとEUにおいて、原発ブームが本格的に始まっています。
しかし、原発建設の技術力を持っている会社は限られています。
現在、アメリカで原発建設が可能な企業は、ほぼウェスティングハウス(Westinghouse)1社だけです。
過去47年間、アメリカで原発建設がほとんど行われなかったため、かつて5万5千人いた従業員数は9千人にまで減少しています。
原発の建設を担えるベテラン技術者はほぼ退職しており、関連協力会社も解体された状況です。
中国やロシアといった原発大国は西側諸国の市場から排除されつつあり、残された競争相手はフランスと韓国程度となっています。
現在原子力関連産業は多くの注目と資金を集めていますが、すでに株価が上昇しすぎており、今から投資するのはリスクが高いと感じられるかもしれません。
もし原子力分野への投資が遅れてしまったなら、「ウラン」に注目するのも良い選択肢となる可能性が高いです。