200円のロト6を買うと、販売経費や手数料で約15%、地方自治体への納付金で約40%が差し引かれます。
つまり、宝くじを購入した時点で、すでに55%は損をしており、残りの45%の中で当選金が分配される仕組みです。
安定して利益を得ているのは、宝くじを売っている側なのです。
カジノも同じです。
儲かるのは賭けをする客ではなく、場所を提供し、確率をコントロールしているカジノの運営者そのものです。
こうした「お金を出す側」と「実際に儲ける側」が異なる構図は、ETFの世界にも存在します。
それが、2倍・3倍のレバレッジETFです。
レバレッジETFには、表面からは見えにくい多くのコストが含まれています。
そもそも、なぜ2倍・3倍のレバレッジ商品が可能なのか?
たとえば3倍レバレッジETFに1,000ドルを投資した場合、運用会社はその3倍となる3,000ドルの運用資金を作るために、残りの2,000ドルを借りて株式や債券を購入します。
こうすることで、指数が1動いたときに3倍の損益が発生するよう設計されています。
実際にかかる費用(手数料)の仕組み
3倍レバレッジETFの手数料構造は以下のようになります。
手数料 = [SOFR + 30〜40bp] × 2.2〜2.4(スワップ比率) + 90〜100bp(運用手数料など)
順を追って説明します。
SOFR(Secured Overnight Financing Rate)とは、米国の超短期金利の代表的な指標です。
「担保付き翌日物資金調達金利」という意味で、アメリカ連邦準備銀行(ニューヨーク連銀)が管理しています。
2025年5月22日のSOFRは4.26%です。
これに0.3〜0.4%の上乗せ(bp=ベーシスポイント)をすると、4.56〜4.66%になります。
ここで重要なのは、3倍のレバレッジと言っても、単純に元本の2倍を借りているわけではない点です。
安全バッファを確保するために、元本の2.2〜2.4倍を借りて運用されています。
よって、4.56〜4.66%の金利で元本の2.2〜2.4倍を借りると、約10.03〜11.18%の金利コストがかかります。
さらにここに、運用手数料などの0.9〜1%が上乗せされます。
合計すると、年間10.93〜12.18%程度のコストが、3倍レバレッジETFの手数料となります。
レバレッジETF特有の「ボラティリティ・ドラッグ」
レバレッジETFには、「ボラティリティ・ドラッグ(Volatility Drag)」と呼ばれる、収益の目減り現象が存在します。
これはレバレッジETFが「日次リターンの倍数」を追従する設計であることに起因しています。
簡単に言うと、複利の効果がうまく働かず、むしろ逆効果になる現象です。
例えば、ある指数が1日目に100、2日目に99、3日目に100と戻ったとします。
指数は元に戻ったので「損はしていない」と思うかもしれません。
しかし3倍レバレッジETFの場合、
1日目:100 → 2日目:97 → 3日目:99.93...と、逆に損をしています。
このように、価格が上がったり下がったりするレンジ相場が続くと、元本が徐々に減っていくのです。
レバレッジETFは「短期向け」商品
このように、レバレッジETFはさまざまなコストが重なるため、短期間で利益を確定することが求められる商品です。
運用会社は、ロトやカジノと同様に、年率10%以上の安定した利益を手数料として得ています。
一方で、レバレッジETFに投資する個人投資家は、何もしなくても年10%以上元本が減っていく構造に直面します。
うまく10%以上の利益が取れて売却できれば良いですが、逆に損失が出ている状態では、元本の減少と損失のダブルパンチに苦しむことになります。
商売の基本は「原価」を知ること
商売をする上で最も基本なのは、「原価」を正確に把握することです。
家賃、人件費、材料費など、原価を理解してはじめて商売が成り立ちます。
レバレッジETFは「原価(=手数料)が高い商品」です。
時間が経てば経つほど、投資した元本が減っていく設計です。
YouTubeなどでレバレッジETFで長期投資シミュレーションなどを紹介している人もいますが、
多くの場合、実際の手数料構造を正しく反映していない可能性があります。
レバレッジETFを用いた長期投資は、商品設計の観点から適していないため注意が必要です。