ムーディーズの米国信用格付けを引き下げ...その影響は?

世界三大信用格付け会社の一つであるムーディーズが、米国の信用格付けを引き下げました。

 

ムーディーズは2023年11月に、米国の格付け見通しを「ポジティブ」から「ネガティブ」に変更していましたが、その見通し変更から1年半後の2025年5月17日、ついに米国の格付けを最高位の「Aaa」から、その一段下である「Aa1」へと引き下げました。

 

今回の格下げは、米国債の金利、不動産価格、米国株式市場に広範な影響を与えると考えられます。

 

まず、米国債にはリスクプレミアムが追加で織り込まれるため、金利がさらに上昇する要因となります。
国債金利の上昇は、米国株式や不動産市場にも悪影響を及ぼす可能性が高いです。

 

国債金利が上がれば、リスク資産である株式の相対的な魅力は低下します。
例えば、国債金利が5%を超えると、リスクを取って株式に投資するよりも、安定的に得られる5%の収益を好む投資家が増える傾向にあります。

商業用不動産も同様です。
例えば1億円で購入した商業用不動産から月額50万円の賃料収入を得られる場合、表面利回りは年6%です。
しかし実際には、テナントの入れ替えに伴う空室期間や仲介手数料、固定資産税などのコストが発生します。
また、テナントの入れ替えが簡単でない場合も多く、空室が発生すれば利回りは低下し、テナントとのトラブルが起こるリスクもあります。
仮に5%の定期預金商品が登場すれば、リスクを負って商業用不動産を保有し続けるよりもストレスなく資金を預金に回そうと考える投資家が増えるでしょう。
結果として、不動産市場から資金が流出し、不動産価格が下落する要因となります。

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