トランプは、カタール王室から4億ドル相当のボーイング747を提供したいというオファーがあったと明らかにしました。
カタールが贈るボーイング747は新品ではなく、カタール王室が13年前から乗っている中古です。
中古と言っても、世界で最も豪華な専用機の一つです。
3つのベッドルームと専用ラウンジ、執務室があるこの航空機は、フロリダ州パームビーチ空港に待機中で、トランプは内部を確認したそうです。
トランプがカタール王室の専用機を欲しがるのは、アメリカの新型大統領専用機の製作が遅れ続けているからです。
アメリカの大統領専用機は35年前の老朽化した機体で、もともとはボーイングが新型専用機を2024年までに納入することになっていました。
コロナパンデミックなどで納期が2027年まで遅延したため、トランプの在任中は新型エアフォースワンにあまり乗れない状況なので、35年前の古い機体よりも13年前の超豪華専用機に乗りたかったようです。
トランプがエアフォースワンを受け取っても、ミサイル防衛システムや通信システムなどを補完するには多くの時間が必要です。
しかしトランプはそのような複雑なシステムは要らないから基本的な盗聴防止システムだけ搭載してすぐに使いたいと明言しています。
では、なぜカタールはトランプに高価な専用機をプレゼントするのでしょうか?
カタールはサウジアラビアとイランの間に位置する人口283万人の小さな国です。
283万人全員がカタール人ではなく、カタール人30万人と外国人労働者253万人で構成されています。
つまり、人口の90%が外国人ということです。
1995年6月25日、カタールの皇太子アールサーニーは、スイスに休暇中だった父親のハマド・アールサーニー国王を追い出すクーデターに成功しました。
父親が長生きしすぎて自分が国王になれないので、父親が海外旅行中の間にクーデターを試みたのです。
クーデターは成功し、ハマド・アールサーニー国王はカタールに戻れず、ロンドンに定住しました。
カタールのクーデターは、サウジアラビアにとって非常に気になる出来事でした。
同じ王政国家であるサウジアラビアに悪い影響を与える可能性があるからです。
その後、国王を再び王位に戻そうとする逆クーデターが起こりました。
逆クーデターは失敗に終わり、クーデターの中心人物を尋問する中で、その背後にサウジアラビアがいることが判明します。
現在のカタール王室とサウジアラビア王室の仲が悪くなった理由がここにあります。
1971年、カタールとイランの間の海に「ノースフィールド」という世界最大の天然ガス田が発見されました。
1980年まで、ノースフィールドから出る天然ガスは需要がなく、輸送する方法もありませんでした。
価値がないと判断した周辺諸国はノースフィールドの所有権を諦め、ノースフィールドはカタールの所有となりました。
ところが、ノースフィールドには6,700兆ガロンのガスが埋蔵されていました。
カタールはこの超巨大ガス田一つだけでロシア、イランに次ぐ世界第3位の天然ガス資源国になります。
1973年のオイルショック以降、日本は中東への依存を減らし、エネルギー源を多様化する必要があると考えました。
LNGと原子力がその選択肢でした。
日本はアラスカの天然ガスを輸入し、LNGの主要輸入国になります。
日本に続き、韓国と台湾もLNGの使用を拡大し、アジア3カ国がLNGの主要な消費国になりました。
そんな中、カタールがLNG市場に本格的に参入しました。
カタールのノースフィールドからの天然ガスの最初の顧客は日本の中部電力であり、2番目の顧客は韓国のガス公社でした。
2007年7月16日、大地震が日本を襲い、柏崎刈羽原発が故障しました。
柏崎刈羽原発は7基の原子炉を持つ世界最大の原発で、東京電力は緊急に非常用発電所を稼働させました。
非常用発電所の燃料は天然ガスで、日本はLNGを大量に買い付けました。
4年後の2011年3月、大地震と津波の余波で福島第一原発で大きな事故が発生しました。
そこで日本はカタールと大量の天然ガスの長期供給契約を結ぶことになります。
カタールの天然ガスが長期契約で多く売れるようになったことで、カタールには大量の資金が流れ込むようになりました。
カタールの主な収入源であるノースフィールドガス田がイランと領海が重なっているため、カタールは常に不安を抱えています。
そのため、カタールは世界最高水準の空軍基地を作ることになります。
空軍基地をアメリカに無償提供し、アメリカ司令部をカタールに誘致することに成功しました。
当時、米軍はサウジアラビアに駐留していました。
サウジアラビアは厳格な宗教国家であるため、サウジアラビアに駐留する米軍は飲酒ができないなど、兵舎生活に不満が多い状況でした。
カタールは最新式の空軍基地を提供し、飲酒を許可するなど、宗教的な制約要件をなるべく解決しました。
米軍はカタールの提案に大喜びして基地を移転することになり、カタールはアメリカに安全を頼ることができるようになりました。
カタールはサウジと同じスンニ派ですが、スンニ派のハマスだけでなく、シーア派のヘズボラも支援する国です。
カタールはノースフィールドのガス田がイランと重なっていることから、スンニ派だけでなくシーア派とも仲良くしたいからです。
ハマスとイスラエル間の停戦交渉の仲介者としてカタールが動いているのは、このためです。
サウジはこのようなカタールの状況を快く思っていませんが、もしサウジがカタールに圧力をかけた場合、カタールも報復手段を持っています。
カタールの主な収入源はLNGであり、原油はほとんど生産していません。
カタールに油田がないから原油生産をしないのではなく、天然ガスで十分だからあえてしない状況です。
サウジアラビアが年間200万バレルを減産して世界の原油価格を管理していますが、カタールは年間600万バレルを生産できる油田を持っています。
カタールの原油生産コストは1バレルあたり約10ドルと非常に低く、ほぼタダ同然の水準です。
そのため、サウジが気に入らない行動をした場合には、カタールは原油を大量に生産して原油価格を引き下げることも可能です。
そのため、サウジが気に入らない行動をした場合には、カタールは原油を大量に生産して原油価格を引き下げることも可能です。
このようにイランとサウジの間に挟まれた地政学的リスクを持つカタールは、アメリカに安全を保証してもらいたいので、ボーイングの飛行機を160機注文し、トランプに大統領専用機をプレゼントしたのです。