トランプとサウジのビンサルマンの取引内容分析(NVidia, Palantir)

2022年、バイデンがサウジアラビアを訪問したとき、ビンサルマンは空港に出迎えに行かず、王宮で待っていました。
結局、会談は目立った成果もなく終了しました。
 

今回のトランプは違いました。
5月13日、中東歴訪の旅に出たトランプがサウジに到着した時は、キング・ハーリド国際空港にビンサルマンが自ら出向いて出迎えました。
サウジアラビア空軍のF-15戦闘機6機が、トランプが乗った米大統領専用機を着陸30分前からエスコートしていました。
会談前からの様子を見ると、サウジアラビアの心構えを知ることができ、発表の結果もある程度予測できます。
 
アメリカは他の国と様々な種類の外交関係を結んでいます。
 
最も強力な外交関係は同盟(Alliance)です。
アメリカは日本、韓国などと同盟を結んでいます。 
同盟は相互防衛条項が通常含まれ、長期的に友好関係を維持する内容が含まれています。

 

これより弱い関係は、戦略的パートナー(Strategic Partnership)です。
具体的な条項ではなく、政治、経済、安全保障など様々な面で協力するという包括的な協力の枠組みです。

 

戦略的パートナー関係より協力の幅が狭く、一定の部分で協力する関係がパートナー協定(Partnership Agreement)です。

 

最も弱い協力関係は協力パートナーシップ(Cooperation Partership)です。
協力パートナーシップはMOU(了解覚書)の形で通常締結されますが、今後ともよろしくお願いしますと握手する程度の最も弱い協力関係です。

 

今回、米国とサウジアラビアが締結した協定は、戦略的経済パートナー協定(Strategic Economic Partnership Agreement)です。
包括的に協力する戦略的パートナー協定ですが、その中でも経済部門に重点を置くということです。
経済を強調したのは、周辺国を刺激しないためだと思われます。
 
協力部分は大きく10分野ですが、エネルギー・防衛・AI・インフラ・宇宙開発・保健など重要な部分が全て含まれています。 
 
サウジアラビアは今回のトランプ訪問団と防衛産業契約だけで1,420億ドル、全体で6,000億ドルレベルの投資を約束しました。 
防衛面では、F-35戦闘機を購入し、対空およびミサイル防衛システムを共同開発する部門が含まれていました。
AIは、サウジアラビアの企業であるデータボルト(DataVolt)が米国内のAIデータセンターに200億ドルを投資し、米国はサウジアラビアにNVIDIAの高性能チップを販売します。
その他、ボーイング737-8旅客機48億ドル、GEのガスタービンなどのエネルギーソリューション142億ドルなどが含まれています。
 
安全保障面では、サウジ軍のためのプログラムを提供し、イランの核解体、シリアの安定化、ガザ地区の停戦などに共同対応することにしました。
 
今回の協定は、経済的パートナー協定の中では最上位レベルです。
名前だけ経済同盟ではなく、戦略的同盟の核心要素をほとんど含む極めて広範な協力関係を結んだと言えます。

今回、初めてトランプ大統領に同行したCEOがいます。
米国パランティアのCEOです。
今回の公式発表には具体的な内容が欠けていますが、何らかの目的があって同行したと考えられます。
 
Nvidiaにも良いニュースがありました。
サウジアラビアに最新のAIチップであるブラックウェルを販売すると発表しました。
ブラックウェル1万8千個をサウジに販売するという内容で、この発表で株価は5.6%上昇しました。 
サウジアラビアは2030年までにAI部門をGDPの12%まで成長させるという目標を持っています。 
そのためには、Nvidiaの高性能チップが必要です。
 
2023年10月、バイデン政権はAIチップが中国に渡るのを防ぐ目的で、サウジアラビアやUAEを含む中東の約40カ国に対して特別な輸出許可制度を導入しました。
Nvidiaの先端AIチップ(H100、H200、ブレックウェルなど)をこれらの国に輸出する際には、米国政府の事前許可を受けるようにしたのです。
今回、トランプはNvidiaが作るAIチップの中で最も高性能なブレックウェル18,000個の販売を承認しました。 
ブレックウェルはとても高価なチップなので100億ドル規模の輸出です。  
 
サウジアラビアは、アメリカからの安全保障の提供と引き換えに、Nvidiaの高性能AIチップを受け取り、代わりに米国製品を大量に購入するという取引を行いました。
トランプにとっては、かなり有利な取引だったと思います。