5月8日、トランプは英国との貿易交渉妥結を発表しました。
英国のキア・スターマー首相の後日談により、トランプが貿易交渉を急いでいるのが明らかになりました。
イギリスのキア・スターマー首相は、20年間アーセナルの年間シーズン券を購入しているほどのアーセナルファンです。
首相になった後も、アーセナルの試合を観に行く姿をよく見せてくれました。
5月8日午前4時(日本時間)には、アーセナルにとって非常に重要な試合であるチャンピオンズ準決勝が行われました。
試合に集中している時にキア・スタマー首相にトランプから連絡がありました。
協議された内容をすぐに発表したいとの内容だったそうです。
本来はイギリス首相がアメリカを訪問して合意のセレモニーを行う予定でしたが、電話で済ませ、トランプはイギリスとの貿易交渉妥結を急いで発表しました。
主な内容は以下の通りです。
- 米国は英国産自動車に対する品目別関税25%を維持するが、年間10万台までは関税を10%に下げる
➡英国が米国に輸出する自動車が10万台程度なので、実質的に英国の自動車は10%の税率が適用されることになりました。 - 英国産鉄鋼とアルミニウムに関税が免除される代わりに、英国は牛肉などの農産物と機械類を開放して50億ドル程度の輸入を増やすことにしました。
英国は追加的に医薬品、半導体などを今後品目別関税で優遇されるそうです。
結局、米国は英国に相互関税10%を引き続き適用する線で交渉を終えました。
いずれにせよ、英国は本気で貿易交渉する相手ではありません。
英国は米国の数少ない貿易黒字国の一つだからです。
2024年に米国は航空機輸出などで英国に119億ドルの貿易収支の黒字を出し、25年度も黒字傾向が続いています。
トランプが英国との貿易交渉妥結を急いだのは、インドとパキスタン間の局地戦のせいでした。
トランプはインドと基本的な貿易交渉が妥結直前段階でした。
インドと一番最初に貿易交渉を妥結するつもりでしたが、
インドとパキスタンとの局地戦により、スケジュールが狂ってしまったのです。
肝心なのは中国でした。
中国からアメリカに出発するコンテナ船の量が半減してから1ヶ月以上経ちました。
米国企業が関税がかかる前に輸入して積み上げておいた中国産輸入品の在庫は、2~3ヶ月程度の量だと言われています。
7月になると、既存輸入しておいた中国産輸入品の在庫が底をつくことになります。
7月4日はアメリカの独立記念日で休日です。
通常、この日を皮切りに本格的なアメリカの夏休みシーズンが始まり、アメリカの小中高校の夏休み期間と重なります。
つまり大量の消費が発生する時期です。
交渉がうまくいかない場合、7月の休暇シーズンにスーパーで供給不足が起こり、物価が急騰することになります。
トランプ大統領に残された時間が残り少ない状況で、先ほど米中貿易交渉の結果が速報で発表されました。
具体的には以下の通りです。
- 関税について
米国は中国産輸入品に対する関税を145%から30%に引き下げ
中国も米国産輸入品に対する関税を125%から10%に引き下げ
中国に対する米国の相互関税は10%
既存の関税と免除を考慮すると、中国に対する米国の実効関税率は41%を下回る - 有効期間
90日間 - 追加引き下げの可能性
米国はフェンタニル問題に進展がある場合、追加引き下げの可能性を示唆
中国が米国産製品の購入を約束する余地あり
上記の発表の後、米国のベッセント財務長官は、数週間以内に中国との貿易交渉を再開し、より大きな合意を目指すと発表しました。
現在、株式市場は急上昇し、ドルは強含みで推移しています。
しかし英国とは異なり、中国は完全な交渉ではなく、90日限定という点がネックです。
米国の7月の休暇期間中の供給不足による物価高騰を防ぐための一時的な措置という印象が強いです。
長期的な合意の不確実性は依然として存在しますが、トランプに残された時間が残り少ない分、結局は肯定的に進める可能性が高いと思います。
予想される争点はフェンタニル、希土類、技術制裁などがあります。